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2005年4月30日 (土)

「Chants, Hymns and Dances」 Anja Lechner cello / Vassilis Tsabropoulos piano

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 ECMニューシリーズからの作品。ドイツ人のアニヤ・レヒナー(チェロ)とギリシア人のヴァッシリス・ツァブロプーロス(ピアノ)による「Chants, Hymns and Dances(聖歌、讃歌、舞踏)」は、東洋的旋律が鮮烈で胸を打つと共に親近感を覚える。アジアとヨーロッパとが交差する背景から生まれた、東洋と西洋、作曲とアレンジと即興、過去と現代、さまざまな要素において境界線をぼかす魅惑的作品。前半と後半にグルジェフの楽曲が、中間にツァブロプーロスの楽曲が配され、弧を描くように構成されている。この録音で、グルジェフの楽曲はこれまでになく自由に扱われ、即興的要素が自然な感じをもたらしている。ツァブロプーロスの楽曲はビザンツ音楽への即興的アプローチを試み、レヒナーのチェロの参加によって手にした自由とリリシズムを漂わせている。それはまたギリシャが東洋への始まりであることを想起させる音楽でもある。
 レヒナーとツァブロプーロスはクラッシクの演奏家でありながら即興の経験があり当作品に功を奏していると思われる。レヒナーはタンゴ・ヌオーボからフリーな演奏までの即興を経験し、記譜されたものと自然発生的なものとの区別を曖昧にするようなプロジェクトにも関わってきた。ツァブロプーロスはクラッシクとジャズの演奏家および作曲家として明確な二面性を持ち活動している。
 少しグルジェフについて触れておこう。彼はアルメニアとトルコの国境の町アレクサンドロポルで、1877年ギリシャ人の父親の元に生まれた。南コーカサス地方は複数の民族と宗教が混ざりあった独特の文化風土をもつ。彼は人間の生の意味にかかわる真理を探究し、その答えを東洋の秘教的伝統のなかに求め、前半生の約二十年を、小アジアからコーカサス地方、西南アジア、中央アジアの国々へ、東洋の辺境をめぐる探求の旅に費やした。その旅の内から種々の精神的な伝統を研究して、民謡、農民の踊り、神聖で儀式的音楽や歌・踊りが、おぼろげに記憶され、弟子でウクライナの作曲家/ピアニスト/ハルトマンへの口伝および記録により、現在でも演奏が可能となった。(一幸斉)

★アーティスト
Anja Lechner cello, Vassilis Tsabropoulos piano
アルバム・データ
Recorded December 2003
Festeburgkirche,Frankfurt am main
Tonmeister: Markus Heiland
Cover: Jan Jedlicka
Photos: Roberto Masotti (pp. 6-9)
Ruben Mangasaryan /Patker Photo Agency
Design:Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
An ECM Production
ECM New Series 1888, UCCE-2038(日本版)

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2005年4月15日 (金)

「The Ground」 Tord Gustavsen Trio

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 ノルウェー出身トルド・グスタフセンのセカンドアルバム「ザ・グラウンド」。ECMならではのピアノトリオの秀作。多くの方に聴いてほしい理屈ぬきで心休まる作品。これぞ音楽・ジャズってこうでなくてはと再認識させられる。真摯に聴くべき上質なピアノトリオだ。
 トルド・グスタフセンのピアノは、控えめで繊細でありながら重い質感と内に秘める力強さが魅力。音楽的には北欧という国・民族・宗教性からくるソウルやフォークと、ジャズのルーツに流れるゴスペルを強く感じさせる、瞑想的で繊細なメロディーは他ではそうは簡単に聴けないと確信する。またインプロビゼーションの手法もテクニックに走ったソロを回すのではなく、楽曲の持つメロディーとイメージを壊すことなく、内に秘める情念をごく自然に展開していくさまには心から感動を覚える。これはメンバー全員が、曲のイメージとインプロビゼーションのあり方に一貫したポリシーを持っているからに違いない。それは音として認識できる物理的なものではなく心と心のインプロビゼーションなのであろう。その意味ではハラルド・ヨンセン(B)ヤーレ・ヴェスペスタ(D)のプレイは素晴しい。これぞ真のリリシズム溢れるピアノトリオであろう。
 アルバム全体の曲想は、硬質な曲とソフトな曲が交互にミックスされたような構成。曲ごとの説明は不要だろう。聴き手が思うがままに身をゆだねて聴き入ればいい。(一幸斉)

★アーティスト
Tord Gustavsen piano, Harald Johnsen double-bass, Jarle Vespestad drums
★アルバム・データ
Recorded January 2004
Rainbow Studio,Oslo
Engineer:Jan Erik kongshaug
Liner Photos: Chris Tribble
Cover Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
An ECM Production
ECM 1892

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2005年4月14日 (木)

「Suspended Night」 Tomasz Stanko Quartet

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 初のCDレビューです。ポーランド出身のトランペッター、トーマス・スタンコの作品「サスペンデット・ナイト」を紹介いたします。このアルバムのジャケットは、ジャン=リュック・ゴダール映画史からのスティルで、ここ暫くECMのHPを飾っています。前作「ソウル・オブ・シングス」には脱帽しましたが、この作品も大変素晴しい。
 今作は、一曲目のソング・フォー・サラと、サスペンデッド・ヴァリエーションズⅠ-Ⅹは組曲的な作品。ゆえに小品的な一曲一曲がそれぞれ前後の曲とストーリーを醸し出す構成です。メンバー個々のソロをフューチャーする部分は多くありませんが、陰陽に富んだ表現豊かなアンサンブルと緊張感が夜の帳を美しく表現します。本当にトーマス・スタンコの明暗に富んだ深い響きは心に沁みます。若手リズム隊の、マルチン・ボシレフスキ(P)スワヴォミル・クルキエヴィッツ(B)ミハウ・ミスキエヴィッツ(D)の絶妙のアンサンブルも、前作「ソウル・オブ・シングス」に勝るとも劣らない出来でしょう。若手ゆえに未成熟さを垣間見る部分も感じますが今後の期待は大です。
 アルバム全体の印象ですが、いやぁ、ソング・フォー・サラは一曲目からマジで痺れさせます。マルチン・ボシレフスキのピアノのイントロに始まり、トーマス・スタンコのトランペットが絡み始めるともうたまりません、ただただ蕩けるだけです。 二曲目以降のサスペンデッド・ヴァリエーションズはⅠのダークなイントロから小気味良い4ビートで始まり、Ⅲでは闇夜を漂わすようなイントロに続き、トーマス・スタンコの音色が温もりを燈し、陰と陽のコントラストが美しい。Ⅳは重厚なイントロから、マイルスの「ブルーイングリーン」を思わせるようなスタイリッシュな展開がGood!Ⅵは心休まるバラードで、本当にトーマス・スタンコの深く豊かな響きが心に沁みます。最後を飾るⅩはECMならではのクリスタル美。完璧です。これでいいのだ、これでいいのだ。(一幸斉)

★アーティスト
Tomasz Stanko trumpet, Marcin Wasilewski piano,
Slawomir Kurkiewicz double-bass, Michal Miskiewicz drum
★アルバム・データ
Recorded July 2003
Rainbow Studio,Oslo
Engineer:Jan Erik kongshaug
Cover:Still from "Histoire(s)du cinema"by Jean-Luc Godard
Photos:Andrzej Tyszko
Design:Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
An ECM Production
ECM 1868, UCCE-1047(日本版)

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2005年4月 5日 (火)

ECMに敬意を称する。

 数多ある音楽レーベルの中で、しかもメジャーで、ECMほど商業主義に染まっていないレーベルはあまり見受けられないと思います。
 ECM創始者でオーナープロデューサーのマンフレート・アイヒャーは、1995年ルフトハンザ航空機内誌の特集で次ような内容を語っています。「私は、現在の市場の動向や流行に追従することに興味はない。未来の可能性を見極めながら音楽を制作することだけに関心がある」。
 またその特集に、ECMアーティストであるメレディス・モンクが「マンフレートが興味を持っているのは半年後のセールス結果ではなく、10年後の音の響きよ」と、ECMの本質を突いたコメントを寄せています。
 現在、商業主義まみれが幅を利かす音楽シーンで、アートとして優れた内容の作品を、30年以上も変わらず世に送り出し続けているレーベルが他にどれほどありましょうか。はっきり言って皆無だと私は思うのです。
 心あるリスナーは真摯にこの現実を受け止め、ECMに敬意を称しようでは有りませんか。

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2005年4月 4日 (月)

ECMとの出会い。

 ECMとの出会いは、私が高校生の頃、近所のレコード屋「十字屋」さんで勧められた「ECM SPECIAL」が最初です。
 もうその時の衝撃は忘れません。「何じゃ、これは!こんな素晴しい音楽があるのか」と感動し、それまで聴いていたジャズやロックの概念が完全にひっくり返えり、その斬新で鮮烈なサウンドに即ノックアウト状態になりました。
 私は、この一枚のディスク「ECM SPECIAL」で人生が大きく変わりました。高校卒業後の進路が、理系の大学からミュージシャンに急変してしまったのですから。ミュージシャンは29歳で足を洗いましたが、堅気となってからもECMファンのまま現在に至っています。(一幸斉)

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祝 「ECMの幸せ」 開設。

 念願のBlog「ECMの幸せ」を開設します。
 当Blogは、私「一幸斉」がECMファン約30年+αの経験を元に、所有するECMコレクションと作品レビューの紹介をメインに、一人でも多くの方に、「ECMの魅力とその素晴しさを知っていただきたい」と念願し開設いたしました。
 なにぶん個人の趣味の延長になりますので、現状はECMの全てを網羅できるものではありませんが、出来うる限りECMのご案内が出来ますよう頑張ります。(一幸斉)

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