「Kultrum - Music for bandoneon and string quartet」Dino Saluzzi / Rosamunde Quartett
ピアソラ亡き後バンドネオンの第一人者として活躍する巨匠ディノ・サルーシと若手新進気鋭のロザムンデ・カルテットによる「 Kultrum - Music for bandoneon and string quartet (サロン・デ・タンゴ)」。
心の奥底から感動し聴くほどに引き擦り込まれる名盤。アルゼンチンの情景を想起させる曲の構成とバンドネオンと弦楽四重奏が一体となった音楽的生命力が鮮烈で凄い。聴き手は抑えることの出来ない郷愁を呼び起こされて、その濃厚なる音楽世界に魅了されてしまう。
Kultrumのプロジェクトは1996年に始められ2年のロードワークが費やされ、サルーシとロザムンデの4人それぞれが主客不分すなわち個と全体が融和し、音は同化と吸収を繰り返しながら一体となり昇華されていった。その音楽はタンゴというジャンルや弦楽四重奏という形式及びそのルーツを意識することを超越している。まさにECMでなければ成し得ない名作であろう。
サルーシのサウンドは、幼少の頃に耳にした民族音楽や印象主義からジャズ等、アルゼンチンに影響を与えた音楽が渾然一体となっている。その表情は多彩で、時に神秘的で、俗っぽく、粗削りで、繊細だ。誰もが持つ故郷そして根源的なものへの郷愁。幼少期に過ごした小さな村での質素な生活への想像上の回帰が、大都市の洗練され過ぎた生活と並べられる。彼はある意味で社会批評家であると同時にそれを表現できるロマンティストである。ラテンアメリカの歴史を背負う複雑な心模様は、バンドネオンの巨匠の立場として伝統を守りつつ、革新をも躊躇しない彼の音楽に厳かなオーラを醸し出している。
ロザムンデ・カルテットは1991年にドイツのミュンヘンで結成されて以来、瞬く間にトップランク入りをし、ヴェーベルン、ブリアン、ショスタコーヴィチの作品や、近年はハイドンの難曲にも取り組んでいる。メンバーは第1ヴァイオリンのアンドレアス・ライナー、第2ヴァイオリンのサイモン・フォードハム、ヴィオラのヘルムート・ニコライ、チェロのアニヤ・レヒナー。ことにチェロのアニヤ・レヒナーは前衛的タンゴのプロジェクトに14年のキャリアがあり、サルーシのソロアルバム「クルトゥルム」に触発魅了されていたことが起因となって、Kultrumのプロジェクトへの参画が実現している。
後述。日本とアルゼンチンとの根源に思考を巡らしてみた。元来、ファーイースト(東洋の東端)とファーウエスト(西洋の西端)はモンゴロイド民族の国土である。南米諸国はスペイン・ポルトガルの影響が濃い。日本への西洋文化の伝来はスペイン・ポルトガルであった。南米諸国には日系移民も多く根源的な繋がり(因縁)が想像する以上に深きことを感じる。(一幸斉)
★アーティスト
Dino Saluzzi bandoneon,
Rosamunde Quartett: Andreas Reiner violin, Simon Fordham violin. Helmut Nicolai viola, Anja Lechner cello
★アルバム・データ
Recorded March 1998
Propstei St.Gerold
Tonmeister: Markus Heiland
Cover Photos: Flor Garduño
Liner Photos: Konrad R. Müller
Design:Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
An ECM Production
ECM New Series 1638
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