
ECMニューシリーズからの作品。ドイツ人のアニヤ・レヒナー(チェロ)とギリシア人のヴァッシリス・ツァブロプーロス(ピアノ)による「Chants, Hymns and Dances(聖歌、讃歌、舞踏)」は、東洋的旋律が鮮烈で胸を打つと共に親近感を覚える。アジアとヨーロッパとが交差する背景から生まれた、東洋と西洋、作曲とアレンジと即興、過去と現代、さまざまな要素において境界線をぼかす魅惑的作品。前半と後半にグルジェフの楽曲が、中間にツァブロプーロスの楽曲が配され、弧を描くように構成されている。この録音で、グルジェフの楽曲はこれまでになく自由に扱われ、即興的要素が自然な感じをもたらしている。ツァブロプーロスの楽曲はビザンツ音楽への即興的アプローチを試み、レヒナーのチェロの参加によって手にした自由とリリシズムを漂わせている。それはまたギリシャが東洋への始まりであることを想起させる音楽でもある。
レヒナーとツァブロプーロスはクラッシクの演奏家でありながら即興の経験があり当作品に功を奏していると思われる。レヒナーはタンゴ・ヌオーボからフリーな演奏までの即興を経験し、記譜されたものと自然発生的なものとの区別を曖昧にするようなプロジェクトにも関わってきた。ツァブロプーロスはクラッシクとジャズの演奏家および作曲家として明確な二面性を持ち活動している。
少しグルジェフについて触れておこう。彼はアルメニアとトルコの国境の町アレクサンドロポルで、1877年ギリシャ人の父親の元に生まれた。南コーカサス地方は複数の民族と宗教が混ざりあった独特の文化風土をもつ。彼は人間の生の意味にかかわる真理を探究し、その答えを東洋の秘教的伝統のなかに求め、前半生の約二十年を、小アジアからコーカサス地方、西南アジア、中央アジアの国々へ、東洋の辺境をめぐる探求の旅に費やした。その旅の内から種々の精神的な伝統を研究して、民謡、農民の踊り、神聖で儀式的音楽や歌・踊りが、おぼろげに記憶され、弟子でウクライナの作曲家/ピアニスト/ハルトマンへの口伝および記録により、現在でも演奏が可能となった。(一幸斉)
★アーティスト
Anja Lechner cello, Vassilis Tsabropoulos piano
★アルバム・データ
Recorded December 2003
Festeburgkirche,Frankfurt am main
Tonmeister: Markus Heiland
Cover: Jan Jedlicka
Photos: Roberto Masotti (pp. 6-9)
Ruben Mangasaryan /Patker Photo Agency
Design:Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
An ECM Production
ECM New Series 1888, UCCE-2038(日本版)
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